目の前の仕事を100%やりきるだけ -#02絶景プロデューサー詩歩-

目の前の仕事を100%やりきるだけ -#02絶景プロデューサー詩歩-

私らしく生きる インタビュー#02

仕事や結婚などの人生選択の岐路である30歳を間近にして、自分らしい生き方とは何かに悩む女性は多くなります。今を輝く先輩たちは、いつ、どんな選択をして、何を指針に生きているのか。 女性の仕事観や結婚観をさぐるインタビュー企画。

今回は絶景プロデューサーの詩歩さんです。 著書である『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』シリーズは累計60万部を超え、企業とのタイアップやテレビ番組、雑誌などでも活躍する彼女。

一体どのように今の地位を築き上げたのでしょうか。30歳を迎えたばかりの詩歩さんが、今どんな仕事観と結婚観をもっているのかインタビューしてみました。

「絶景の仕事は来年やめてもいいと思っています。
目の前の仕事を100%でやりきるだけ」

−絶景のお仕事を始めたきっかけについて教えてください

詩歩さん:2012年に新卒で入社した、インターネット系の広告代理店の新人研修がきっかけです。30名いた新入社員全員に「Facebookページを立ち上げて、”いいね数”競い合う」という課題が出されました。そのときに作った「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」というサイトが予想以上にバズって。サイト立ち上げから4ヶ月後に、出版社から「本を執筆しませんか?」と声がかかりました。

−新人研修時代に手掛けたWebサイトが、あの大ヒット本の前身なのですね。立ち上げから、どんなペースで “いいね”が増えていったのですか?

詩歩さん:4月に立ち上げて開始1日目で100いいねをもらって、1ヶ月半後には1,000いいねになりました。そして、 2ヶ月半後には1万いいねを突破して……。1年半弱で、ファン数が56万を超えました。

−それはすごい勢いですね。「死ぬまでに行きたい! 世界の絶景」というコピーがとても秀逸だと思ったのですが、タイトルはすぐに思いついたのでしょうか?また、テーマを絶景にしたのはなぜですか?

詩歩さん:課題が出された日に、帰宅してすぐに制作しなければいけなかったので、タイトルはほぼ思いつきで決めました。絶景をテーマに選んだのは、マーケティングの観点からです。Facebookというプラットフォームの特性を考えたときに、画像が大きく表示されるコンテンツの方が目に留まりやすくて、いいねを獲得しやすいと思ったんです。また、2ヶ月の運用ルールが課されていたので、自分自身が興味のある内容じゃないと継続できないと思って、「旅行」×「絵力がある」=「絶景」となりました。

サブタイトルを「死ぬまでに行きたい!」としたのは、卒業旅行で訪れたオーストラリアで交通事故に巻き込まれて死にかけるという経験をしたからです。幸い命に別状はなかったのですが、ドクターヘリで病院に運ばれて耳を手術するほどの大怪我でした。こうした過去の苦い経験もあって、「死ぬまでに行きたい!」という言葉に“人間いつ死ぬかわからないからやりたいことだけはやっておくべきだ”という私なりのメッセージを込めました。

−詩歩さん独自の、「絶景」の外せない定義とは何ですか? また、詩歩さんが提案する絶景の何が人を惹きつけると、ご自身では分析されていますか?

詩歩さん:絶景の定義はサイト立ち上げ当時から変わっていなくて、「写真を見たときにインパクトがあること」と「背景にストーリー性があること」の2つです。

一般的な旅の写真集やガイドブックだと、写真を撮った人のドヤ感がすごく伝わってくるので、私自身あまり好きになれませんでした。そこで、写真に絶景だけを収めるのではなく、絶景に立つ私も一緒に登場させることで、見る人がリアルに訪れたときの様子をイメージしやすいように工夫しています。あとは、その場所の歴史や文化を感じられる画にすることですね。訪れたい欲求が掻き立てられるようにしているのもこだわった点です。
改めて分析すると、私は元々、自分でその土地に行って写真を撮る側の人ではなかったので、旅に行きたい人の目線で情報を発信しているのがよかったのかなと思います。

−絶景プロデューサーとは、具体的にどのような仕事になるのでしょうか?

詩歩さん:大きく分けると3つの仕事があります。1つ目は絶景に関わるモノを「作る」仕事です。2013年に『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』の書籍を出して以来、毎年1冊のペースで本を作っているのと、絶景のカレンダーやパズルなどのグッズを制作しています。

2つ目は「タイアップ」の仕事です。企業様からお声がけいただき、絶景にまつわる企画やイベントを一緒に考えています。

3つ目は「投資」ですね。新たな絶景スポットを発掘して情報発信をするために、毎月1回は海外に行きますし、国内には週1ペースで出かけます。常に情報をリニューアルすることで、仕事の依頼があったときによりよい提案ができるように心がけています。
そして、1つ目と2つ目の仕事で得た収入をもとに、撮影した絶景写真をシェアできるウェブサイト「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」をスタッフに運用してもらっています。かつて私自身がFacebook上のサイトを運用していた頃は、紹介する絶景選びに実は一番時間をかけていました。その場所にまつわるストーリーなども調べながら選定するので、スポットの候補を一箇所選ぶのに大体2時間は費やしていたと思います。

自分が行きたい場所を選んでから写真をセレクトするのですが、場所がよくてもいい写真が見つからなければ候補から外しますし、逆に写真はよくてもその場所にストーリー性がなければ載せません。

−いつも情報収集はどのように行なっているのでしょうか?

詩歩さん:私が紹介する場所は観光地として有名な場所が多いのですが、情報の信頼性の高さを重視して、地元の観光協会のホームページなどの公式サイトから調べるようにしています。

−他に何か工夫されていることはありますか?

詩歩さん:やらない仕事の線引きをきちんとすることです。フォロワー数が多いので、「Instagramでキャンペーンのプロモーションをしてください」という案件がよく来るのですが、すべてお断りするようにしています。過去に受けていた時期もあったのですが、企業から広告費をもらって宣伝しているのがわかるので、ダサいなと思うようになったのが理由です。

−ブランドイメージを崩さないように工夫されているのですね。タイアップのお仕事で、自分らしさがもっとも活きたと思うものがあれば教えてください。

詩歩さん:5年前から携わっている茨城県の魅力を発掘するお仕事です。茨城県は県の魅力度ランキングがずっと最下位なのですが、東京から近いですし、山も海もある自然豊かな場所。きっとまだ知られていない魅力がたくさん眠っているはずで、その魅力を地元の方と一緒に探すお手伝いをしています。

−地域のプロモーションに関わるお仕事だと思うのですが、具体的には何をされているのでしょう?

詩歩さん:年間を通してお手伝いしていることが2つあって、1つ目はフォトコンテストを私のメディア上で開催することです。私が絶景の写真を撮りに行くのではなくて、一般の方に参加してもらって、茨城の絶景写真を投稿してもらうことで、地域の魅力を発掘する試みです。

2つ目はメディアの方やインフルエンサーを集めて、私がおすすめする茨城県の絶景スポットを1泊2日で巡る女子旅の企画をしています。参加者からも好評で、私自身も他の方が感じた茨城の魅力をブログやSNSを通して知ることができるので、発見が多くて毎回楽しみながら参加させてもらっています。

−詩歩さんが関わることでどんな効果があったのでしょうか?

詩歩さん:定量的な部分で計測はしていないので、直接の因果関係までは調べられないのですが、以前、国営ひたち海浜公園のネモフィラの花をFacebook上で紹介したことがあったんです。それを皮切りに来場者が急激に増えたようで、茨城県知事から表彰されました。

私がやっていることは、情報を「0−1」にすることではなくて「1−100」にすること。人が多く訪れる場所を私のサイトで紹介して、さらにより多くの方に知ってもらえるようにお手伝いすることだと思っています。

−ご自身の役割を客観的に捉えて実践されているのが、詩歩さんのすごいところだと思います。会社員をしながら絶景の仕事を続けるのではなく、独立することにしたのはなぜですか?

詩歩さん:会社が副業禁止だったからです。最初は副業可能な会社に転職しようと思って、クリエイティブ系の転職支援をしている方に相談したときに、「二足の草鞋を履く前提で新しい仕事と絶景の仕事を始めたとしたら、どちらも5:5の力でやることになって、たぶん成功しないよ」と言われて、その通りだなと思いました。

日本は恵まれた国ですし、絶景を100%の力でやってみて失敗したところで死ぬようなことはないはずなので、やってみてダメだったらまた就職しようって思って、入社2年目のときに独立することにしました。それから5年が経ったという感じです。

−デビュー当時は絶景写真をプロの方から購入したりお借りしたりしていたそうですが、独立されてからはご自身で撮影していらっしゃるんですよね。たくさんの努力をされて今の不動の地位を築き上げてきたと思うのですが、絶景のジャンルでトップを目指すまでにどのような努力をされてきたのでしょう?

詩歩さん:2014年から一眼レフでの撮影を始めました。すべて自己流なので、カメラの機材や技術的な話はよくわからないのですが、絶景を見られるかどうかは下調べが9割なので、撮影前は1〜2週間かけてじっくり情報収集をしています。

どのアングルで撮影すればイメージ通りの写真が撮れるのか、Googleマップを駆使してピンポイントで探してから向かうので、到着してから歩き回って撮影スポットを探すようなことはまったくしないですね。

−撮影スポットをピンポイントで探すとなると、かなり時間がかかるのではないですか?

詩歩さん:慣れるとそれほど時間はかかりません。風景の見本となる写真があって、そこに写り込んでいる山や崖や街などを基準に探していけば、どれくらい離れた場所から撮っているのかが大体わかるんです。写真好きなら皆やっていると思いますよ。

−職人芸に近いやり方ですね。意外とアナログな方法で驚きました。撮影スポット探しも場数をこなすことが大事なのですね。他に何か興味があって、今後のお仕事に生かしたいと思うことはありますか?

詩歩さん:元々旅好きではありましたが、絶景が大好きという理由で始めた仕事ではないので、変に固執はしていないんです。自分の中でこれをやって世界を変えたい!みたいな大きな野望があるわけではなくて。

−将来のビジョンがしっかりある方なのかと勝手に想像していたので、その答えは意外です。

詩歩さん:ただ、絶景を発信するという枠組みで考えたときに、時代の変化に合わせて柔軟に対応していきたいとはいつも思っています。例えば、女子高生の間でブームとなっている『Tik Tok』というアプリがあって、まだメジャーになる前から使い始めました。15秒の動画に音楽をつけて投稿するメディアで、他のSNSとユーザー層がまったく異なるので、新しいファン層が増えたらいいなと思ってやり始めたのですが、こうした取り組みがきっかけでまた新しいお仕事をいただけたりするので、ありがたいです。

−次は詩歩さんの結婚観についてお聞かせください。具体的にいつ頃までに結婚したいと思っていますか?結婚に向けてご自身が大事にしている価値観などがあれば教えてください。

詩歩さん:先日、30歳になったばかりなのですが、結婚を焦る気持ちは全然なくて。東京での生活も10年目で少し飽きてしまって、新たな刺激を求めて昨年6月に憧れだった京都に移住をしてしまいました。1年間限定でのプチ移住なので、関西を中心にまた新たな絶景スポット探しを楽しみたいと思っているところです。そんなこともあって、まだ結婚という考えには至っていないですね。

−将来、結婚するとしたら、どんな男性ならば合うとご自身で分析しますか?

詩歩さん:元々一人でいるのが好きなので、誰かと一緒にいるのを求めないタイプというのがあります。なので、自立している人の方が合うと思います。私が1週間仕事でいなかったとしても、一人で山登りをしたりして趣味の時間を楽しめるような、自立している人が理想ですね。

−恋人と一緒に絶景を見に行きたいと思うことはないのでしょうか?

詩歩さん:私の絶景旅はとてもハードなので、プライベートで楽しみたいと思っている人を連れていくのは申し訳なくて(笑)。絶景を見つけてベストショットを撮ることがミッションなので、撮影が早朝から深夜まで続きますし、移動も多いので体力的にもキツいと思います。私自身、絶景を楽しみに行っているという意識ではなくて、完全に仕事モードで訪れているので、そういう旅でも大丈夫な人だったら一緒に行ってもいいかもしれません。

−絶景探しの旅は、お仕事の側面が強いのですね。もし結婚するとなると、仕事と家庭の両立がなかなか大変になってくるのではと思うのですが、今のお仕事スタイルは結婚後も続けられるイメージでしょうか?

詩歩さん:今の仕事をいつまで続けるかは特に決めていないですし、絶景の仕事にすがりつく気もまったくありません。極端な話ですが興味がある仕事が見つかれば、来年やめてもいいとさえ思っています。結婚を考え始める頃の自分が何をしているのか、まったく想像できないですね。

どんな仕事でも100%でやり切りたいと思っていて、あえて自分にノルマを課すようにしています。50%でやるという選択肢は私の中にないので、他にやりたいことが見つかったら、それを100%でやりきるのみです。

−35歳の自分というテーマで理想的な未来像はありますか?

詩歩さん:35歳か…。意外とすぐですね(笑)。正直、どこに住んでいるのかもわからないですね。ただ、日本の食事が好きなので、海外に住むという選択肢はないです。25歳の頃の私が30歳になる今の私を想像できたかというと、全然できなかったので、35歳の自分も全然違う自分になっていたらいいなと思います。絶景の仕事をやっているとしたら、表に出る仕事というよりは裏方のコンサル業のようなことをしているような気がします。

−絶景シリーズ6冊目となる新刊『死ぬまでに行きたい!世界の絶景 ガイド編』の本づくりでこだわったポイントを教えてください。

詩歩さん:私が巡った場所の中から、特におすすめしたいスポットを国内外合わせて100ヶ所以上セレクトしました。

過去の絶景シリーズとの大きな違いは、絶景へのアクセス方法や絶景に出会える時期と時間帯など、通常のガイドブックには載せない生の情報をたくさん盛り込んだことです。実際に私が撮影で訪れたルートがそのまま掲載されているので、旅慣れしていない方でも絶景旅を楽しむことができる仕立てになっています。絶景デビューにぜひご活用ください!

詩歩(Shiho)

「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」プロデューサー

1990年生まれ。静岡県浜松市出身。早稲田大学卒。運営するFacebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」が70万以上のいいね!を獲得し、話題に。書籍も累計63万部を超え、“絶景”は流行語大賞にもノミネートされた。現在はフリーで活動し、旅行商品のプロデュースや地方自治体の観光アドバイザーなどを行っている。静岡県観光特使・浜松市観光大使。近著は『ダナン&ホイアンPHOTO TRAVEL GUIDE』。

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